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手術の進め方

手術療法はこのように進められます

手術はヘルニアを取り除いたり、ヘルニアをおこしている椎間板内の髄核を抜き取ってなかの圧力を下げたりして、神経への圧迫を取り除く目的で行われます。
腰椎椎間板ヘルニアで緊急に手術が必要なのは、膀胱直腸障害、脚の重度のしびれや筋力の低下を伴う場合です。 このような症状を放置しておくと、傷ついた神経が回復しにくくなるため、膜胱、直腸などの機能や脚の筋肉の動きが元に戻りきらず、後遺症が残る場合があります。 速やかに手術を受けることが重要です。

そのほかに、手術が検討されるのは、以下のような場合です。
・保存療法で治療効果がみられず、痛みや筋力の低下などの症状が続いている。
・保存療法で治る可能性はあるが、日常生活や社会生活に著しい支障が出ている。
・体を使う職業やスポーツ選手などで、できるだけ早く復帰したい希望がある。

1.問診や検査で診断を確定し、 重大な神経の障害がある場合は手術を考慮します。

腰痛、脚の痛みやしびれを訴えて受診した患者さんに対して、 保存療法の治療計画と同様に問診、視診、下肢伸展挙上テスト、大腿神経伸展テスト、触診、さらに、Ⅹ線検査、MRI検査、その他必要な検査を行い、 腰椎椎間板ヘルニアかどうかを診断します。 排尿や排便がうまくできない勝胱直腸障害や、著しい筋力低下などが出ている場合は、障害が残らないようにただちに緊急手術を検討する必要があります。

2.保存療法を続けても回復がみられない場合は、手術を検討します

診察・検査で緊急手術は必要ないと判断された場合は、保存療法の治療計画と同様に安静、薬物療法、神経ブロック、物理療法などの保存療法を行って、経過をみていきます。

3カ月ほど治療を続けても効果が現れず、痛みやしびれ、筋力の低下などが改善されなかったり悪化したりして、生活に支障をきたすような場合は、手術を検討することになります。

症状によっては手術を検討します

排尿や排便がうまくいかなかったり、力が入らず脚がうまく動かなかった場合は、神経が強く障害を受けているので、回復を図るために早めの手術が必要になります。

3.手術法を選択し、入院します

【手術方法の選択・入院】

◎背中側から切開して髄核を摘出する手術法の後方椎間板切除術が、基本的な手術法です。
◎必要に応じて「後方椎間板切除術」と椎骨どうしがぐらぐらしたり、ずれていたりする場合などに、上下の椎骨をくっつけて固定する脊椎固定術を組み合わせる場合があります。
◎その他の手術法を棉討することもあります。
◎手術法が決まったら、医師は患者さんに十分な説明をします。
◎各種検査を行って全身の状態をチェックしたのち、入院します。
◎必要に応じて、目的の部位に造影剤を入れてⅩ線撮影をし、患部のくわしい情報を得る画像検査である造影検査を行います。

もっともよく行われている手術法は、背中側から切開して、ヘルニアを摘出し、神経根への圧迫を取り除く「後方椎間板切除術」です。 この手術では、従来どおり肉眼で見ながら進める直視下手術のほかに、顕微鏡や内視鏡を使用する、切開部の小さい手術法もとられます。

患者さんによっては、椎間板が極端に弱くなっていて、上下の椎骨がぐらぐらしたり、ずれたりしていることがあります。 また、以前に腰椎椎間板ヘルニアの手術を受けたものの、再発して、2度目、3度目の手術の場合もあります。

これらの場合は、椎間板を摘出したのち、骨を移植し、上下の椎骨をくっつけて固定する「脊椎固定術」をあわせて行うことがあります。 そのほかの手術法として、皮膚を切開しない「経皮的椎間板摘出術」、「レーザー椎間板蒸散法」があります。

いずれも高くなっている椎間板内の圧力を下げ、神経根への圧迫をやわらげる方法ですが、有効な患者さんは限られています。 手術法が決まったら、各種検査を行って全身の状態をチェックし、入院します。 必要に応じて、造影検査で患部や神経の状態などをくわしく調べます。

4.手術当日は安静を保ちます

後方椎間板切除術は、直視下、顕微鏡下、内視鏡下とも全身麻酔下で行われます。 経皮的椎間板摘出術、レーザー椎間板蒸散法は局所麻酔下で行われます。 手術直後から手術部位の痛みをおさえるために鎮痛薬を用い、痛みの状態に合わせて坐剤、注射剤などが使用されます。また、傷口からの感染を予防するため、抗菌薬を点滴で授与します。 手術当日は原則として安静を保ちます。

5.日常生活に困らない程度に動けるようになったら退院します

徐々に活動の範囲を広げ、日常生活に困らない程度に動けるようになったら退院します 。
一般に、手術の翌日には手術の効果によって、手術前にあった脚や腰の痛みはなくなるか、かなり少なくなっているはずです。 ベッドを少しおこせるようになり、コルセットをつけて体をひねらないように注意しながら、横向きになったり、寝返りを打ったりします。

2日日にはベッドに腰かけることができます。 手術部位の痛みに応じて歩行練習を開始します。後方椎間板切除術を内視鏡下で行った場合は、直視下の場合より早めに歩行練習を開始できます。 複数の椎間板を手術したり、脊椎固定術を行ったりした場合には、歩行の練習開始が多少遅くなり ます。

最初は歩行器を使用して、歩幅を狭く、ゆっくりと歩くようにします。一般に、1週間以内に、歩行器を使わずに歩けるようになります。 手術部位の痛みがおさまってきたら運動療法を始めて、腹筋や背筋を強化します。 日常生活に困らない程度に回復したら、担当医と相談して退院時期を決めます。

6.過浣後は、約1年間経過を観察します

退院後は徐々に、日常生活に戻ります。 ただし、椎間板に大きな負担をかける仕事や、スポーツの開始時期については、担当医と相談してください。 退院後も、運動療法で腹筋や背筋を強化します。 スポーツなどに復帰しても、運動療法を続けることが望まれます。

手術後は定期的にMRI検査を受けて、回復の状態を確認します。著者は6カ月後と1年後に行うようにしています。

退院後しばらくは腰に負担のかかる動作は避けましょう。

重いものを持ち上げる、重いものを持ったまま腰をひねる、長時間運転を続けるなどは、腰に大きな負担となります。 回復の状態を確認するまで、用心が必要です。