様々な手術方法
後方椎間板切除術はヘルニアを取り除く手術法です。
腰椎椎間板ヘルニアでもっともよく行われる手術法は「後方椎間板切除術」です。
これは背中側から切開し、飛び出した髄核などを切除する方法で、どのタイプの腰椎椎間板ヘルニアにも行うことができます。
この手術を始めた医師の名前から、ラブ法と呼ばれています。
肉眼で見ながら行う直視下手術のほか、顕微鏡や内視鏡を使用した手術も行われますが、もっとも一般的なのは直視下手術です。また、患部の状態によっては、直
視下手術と内視鏡下手術を組み合わせることもあります。それぞれに長所がありますが、手術複数カ月たった場合の治り方に大きな差はないといわれています。
そのほか、腹側から切開する切除術が行われることもあります。
背中側から骨や靭帯を一部削り、硬膜と神経根を固定して、これらをよけながら飛び出している椎間板組織を取り除きます。 飛び出している部分だけでなく、椎間板内に残っている髄核も取ります。 |
【直視下手術】
背中側の皮膚を切開し、骨の一部と黄色執帯の一部を削り、圧迫された神経をよけて、飛び出している髄核を取り除きます。
再発予防のため、飛び出している部分だけではなく、椎間板内に残っている髄核も取り除きます。
手術は全身麻酔下で行われ、30分から1時間程度かかります。手術後は2~3日で歩けるようになり、入院期間は1~2週間です。
椎間板を取り除いたあと、上下の椎骨がぐらぐらしたり、ずれたりしている場
合や、再発による2度目、3度目の手術の場合などは、「脊椎固定術」を同時に行うことがあります。
これは、患者さん自身の骨を移植し、チタン (金属の一種)製などの脊椎内固定器具を用いて、椎骨が動かないように固定するものです。
この場合、手術時間は1~2時間程度長くなり、歩けるようになるまで3~4日程度かかります。
入院期間は個人差が大きく、10日~1カ月になります。
【顕微鏡下手術】
顕微鏡下手術は、直視下手術と同様に背中側を切開し、患部を顕微鏡で観察しながら行います。 顕微鏡下手術の利点は、手術を行う視 背中側から骨や靭帯を一部削り、硬膜と神経根を固定して、これらをよけながら飛び出している椎間板組織を取り除きます。 飛び出している部分だけでなく、椎間板内に残っている髄核も取ります。 野が拡大されるため明るく鮮明で、病変部周囲の血管や神経がよく見え、止血も容易なことです。 髄核を取り除く処置は直視下手術と同様ですが、傷口が直視下手術より小さいので、手術部位の痛みぐあいがやや楽になります。 手術時間は1時間程度、入院期間は3~4日で、早ければ翌日の退院も可能です。
【内視鏡下手術】
後方椎間板切除術の3つの方法のうちでは、もっとも新しい手術法です。
直視下手術と同様に背中側を切開し、患部を内視鏡で観察しながら行います。
内視鏡下手術の利点は、顕微鏡下手術と同様に、手術を行う視野が拡大されて微細な構造がよく見えることです。
骨から筋肉をはがす量が少なくてすみ、椎間関節を傷める度合いも減少します。傷口が顕微鏡下手術よりさらに小さいといったメリットもあります。
患者さんは、手術部位の痛みが少なく、手術当日から歩くことができます。入院期間は3~4日で、早ければ翌日の退院も可能です。
後方椎間板切除術の3つの方法ではいずれも、手術後早期に歩行が可能です。
それぞれ皮膚の切開や骨から筋肉をはがす量に差があるため、手術後早期の手術部位の痛みには違いがあります。
しかし、手術後3カ月程度経過した場合の治療成績では直視下手術、顕微鏡下手術、内視鏡下手術に、差はみられません。
なお「脊椎内視鏡下手術・技術認定医」の人数は全国的にまだ少なく、手術を受けられる医療機関が少ないのが現状です。
【前方から行う切除術】
腹側から切開して、椎間板の前方から髄核を取り除く手術法で、脊柱管内に飛び出した髄核も摘出します。 病変のある椎間板の髄核を軟骨終板まできれいに取り除き、そこに患者さんの体から取った骨を移植して准問を固定する方法と、摘出だけ行って固定しない方法があります。 後方椎間板切除術でときにみられる、神経板を引っ張ることによる損傷や、神経根の周囲との癒着などがおこりにくいという特長がある一方、 腰部脊柱管狭窄症を伴う症例や、遊離脱出型のものは取り除くのがむずかしいなどの制約があります。 全身麻酔下で行い、手術時間は1時間半程度です。 開腹して直視下で行う従来の方法に加え、内祝鏡下による手術も行われています。
種皮的椎間板摘出術は椎間板の内圧を下げる治療法です
皮膚を切開しない手術として、「経皮的椎間板摘出術」「レーザー椎間板蒸散法」があります。 経皮的椎間板摘出術は、背中側から椎間板に直径3?4mm程度の管を入れ、そこに手術器具を挿入して、ヘルニアをおこしている椎間板から髄核の一部を抜き取る手術です。 髄核の量を減らすことで椎間板内の圧力を下げ、神経への圧迫を減らして症状を改善させるのが目的です。 手術の対象は膨隆型と脱出型の腰椎椎間板ヘルニアに限られ、髄核が後縦靭帯を破って脊柱管内にまで飛び出している場合はこの手術は行えません。 また、ヘルニアそのものを取り除くわけではなく、椎間板内の圧力を下げる間接的な治療法なので、痛みのとれにくい症例もあります。 手術は局所麻酔下で行われ、手術時間は30分~1時間程度、傷も小さいので入院期間は1~3日間程度です。
経皮的椎間板摘出術は髄核を抜き取って椎間板内の圧力を下げる手術です。 背中から皮膚を通して細い管をヘルニアをおこしている椎間板まで入れます。 その管を通して手術器具を挿入し、髄核の一部を抜き取ります。 |
レーザー椎間板蒸散法
レーザー椎間板蒸散法は、経皮的椎間板摘出術の考え方を応用し、レーザーファイバーをヘルニアのある椎間板に挿入して、レーザー照射の熟で髄核にふくまれる水分量を減らし、椎間板の内圧を下げる方法です。 このPLDDと呼ばれる椎間板ヘルニアのレーザー治療については、別のページで詳しく説明しています。