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保存療法の進め方

保存療法はこのように進められます

腰椎椎間板ヘルニアの治療では、まず保存療法を行うのが一般的です。
ただし、排尿や排便に支障が出るような膜胱直腸障害や、強いしびれ、脚の著しい筋力低下などの症状を伴う場合は、早期に手術を検討します。腰椎椎間板ヘルニアの痛みは、時間の経過とともに自然におさまっていく場合が多く、一般には症状が出てから1カ月以内に軽くなっていきます。

1カ月程度が経過したところで、軽い筋力の低下などが残っていても、障害を受けた神経棍がゆっくり国復したり、隣り合う神経根が障害を受けた神 経根に代わって働くようになることも期待できるので、保存療法を続けます。 痛みが軽くなったら、徐々に安静状態から日常の活動へと移り、薬物療法を中止して、経過観察を行います。

スポーツをふくめたもとの活動には、およそ3カ月過ぎたころから復帰することができます。 3カ月以上保存療法を続けても症状が軽くならない場合や、一度おさまっていたのに再発して痛みが続く場合は、神経ブロックなどもふくめ、複数の保存療法を組み合わせて治療していきます。

手術をせずに保存療法を行い治った例が、自然治癒なのか、治療の効果なのかを判断するのは困難です。 また、急におこった腰椎椎間板ヘルニアで、とくに治療をしなかった場合と、保存療法を行った場合との回復状態の差や、各保存療法の効果の優劣については、まだ結論が出ていません。

1.問診、視診、触診、神軽学的検査、画像検査などで診断を確定します

【0~1週間】

◎問診、視診、下肢伸展挙上テスト(*1)、大腿神経伸展テスト(*2)、触診、神経学的検査(*3)などを行います。
◎X線検査、MR-検査を行います。
◎必要と判断された場合は、造影検査(*4)、血液検査、生化学検査(*5)、尿検査、骨密度検査、電気生理学的模査(*6)などを行います。
◎診察と検査の結果、診断を確定します。

(*1)下肢伸展挙上テストあお向けに寝た患者さんの伸ばした脚を持ち上げ、特定の場所に痛みが出るかを確認します。
(*2)大腿神経伸展テストうつぶせに寝た患者さんのひざを曲げさせて足首を支え、ももを持ち上げて、特定の場所に痛みが出るかを確認します。
(*3)神経学的検査筋力、感覚、腱反射をみて、神経の障害の状態を調べます。
(*4)造影検査日的の部位に造影剤を入れてⅩ線撮影をし、患部のくわしい情報を得る画像検査です。
(*5)血液の血清中の成分を科学的に分析し、病気を調べる検査です。
(*6)脚の筋肉や末梢神経に刺激を与え、筋肉や神経の異常を調べる検査です。

まず、問診を行います。
視診では、おもに姿勢を観察します。これは腰痛、脚の痛みを避けるために、痛みの出ない方向に体を曲げている患者さんが多いためです。次に、患者さんに前にかがむ、うしろに反る、腰をひねるなどの動きをしてもらい、動かせる範囲や痛みがおこる姿勢などを調べます。

また、下肢伸展挙上テストおよび、大腿神経伸展テストを行い、一定の姿勢により脚(下肢)の痛みが誘発されるかを調べます。SLRテストで痛みが生じれば腰椎の下部におこった椎間板ヘルニ アが疑われ、FNSテストで痛みが生じれば腰椎の上部におこった椎間板ヘルニアが疑われます。

さらに、触診や神経学的検査(筋力低下の有無、感覚の異常がないか、腱の反射の状態などをみて、神経の障害の程度や、どの神経が障害を受けているか)などを調べます。 画像検査では、まずⅩ線検査で骨の状態を、MRI検査で椎間板や飛び出した髄核の状態などをみます。MRI検査でほぼ確定診断が可能です。

必要に応じて、脊髄造影や選択的神経根造影などの造影検査を行い、MRI検査だけでは足りない情報を補います。 また、血液検査、生化学検査、尿検査などを行い、腰椎の変性以外の炎症や腫瘍の影響、および内臓や血管の病気がないかどうかを調べます。

たとえば、これまでにがんの手術をしたことがある患者さんが、脚の痛みを強く訴える場合は、がんのマーカーまでふくめて血液検査を行います。 骨租馨症を調べるための骨密度検査、筋肉や神経根の障害の程度をみる電気生理学的検査などを行う場合もあります。 以上のような検査を行って、腰椎椎間板ヘルニアの診断を確定します。

  直立しているときを100として、日常生活の動作で椎間板にかかる圧力を比べたものです。 直立よりも腰を曲げた姿勢のほうが圧力がかかり、荷物を持つとさらに負担が増します。痛みがあるうちは椎間板に負担がかからない姿勢を心がけましょう。

2.発症早期には、安静、薬物療法、神経ブロックを適宜併用して治療を進めます

【~3ヶ月】

◎痛みが強い場合は安静にします。動ける場合は、痛みを招く姿勢をとらないようにして、できるだけふだんどおりの生活を続けます。
◎薬物療法では、非ステロイド性消炎鎮痛薬と筋弛緩薬(*7)を服用します。湿布剤や塗り薬を用いることもあります。
◎薬物療法で効果がみられない場合は、神経ブロック(*8)を行います。
◎コルセットによる装具療法を行います。

(*7)筋弛緩薬 筋肉の緊張をゆるめて、痛みを軽くする薬です。
(*8)神経ブロック 痛みのおこっている神経に局所麻酔薬やステロイド薬を注入して痛みを抑える治療法です。

発症早期の痛みの強いときには安静を基本とし、体を激しく使う仕事や活動、スポーツは行わないようにします。 座っているのがつらければ、横になるなど楽な姿勢をとるようにします。
薬物療法としては、痛みや患部の炎症を抑える非ステロイド性消炎鎮痛薬を用います。 この薬にはいろいろな種類があるので、3日~1週間程度で症状が軽くならない場合は、別の種類に変更します。 また、胃腸のぐあいが悪くなるなどの副作用が出た場合にも、担当医に伝えて別の種類の薬に変えてもらうようにします。

湿布剤や塗り薬などの外用薬を、併用することがあります。 ほかに、こわばった筋肉の緊張をほぐして痛みを軽くするために、筋弛膚薬が併用される場合もあります。 薬を用いても痛みがおさまらない場合は、神経ブロックを行います。 発症後2週間たっても症状が半減しない場合は、神経ブロックの1つの方法である硬膜外ブロックを行います。

硬膜外ブロックを行っても効果がなければ、選択的神経根ブロックを行います。 1回で効果があった場合はそのままようすをみます。効果が持続する患者さんもいますが、少しずつ痛みが戻ってくる場合は、もう1回行うのが一般的です。 その後も治療を継続する場合は、3カ月に1回行います。

薬物療法も神経ブロックも、ヘルニアを直接縮小させることはありませんが、圧迫によっておこった神経根の炎症を軽減する効果があります。 また、コルセット着用による装具療法を行うこともあります。 コルセットをつけると、腰が安定し、動きが制限されることで、椎間板にかかる負担が減るため、痛みを軽くする効果があります。

ただし、つけ続けると逆に筋力を弱めることになるので、つける期間は担当医の指示にしたがいましょう。 大部分の症例では、以上のような保存療法を行うことで、発症後1カ月以内に腰痛、脚の痛みやしびれなどの症状が改善されます。

3.慢性の痛みには複数の治療法を組み合わせて症状を改善します

【3ヶ月~】

慢性の痛みに関する保存療法
◎日常生活での姿勢や動作についての指導を行います。
◎症状に応じて薬物療法を続けます。
◎神経ブロックを適宜行います。
◎装具療法、物理療法で症状の軽減を図ります。
◎運動療法を行います。
◎保存療法で効果がみられない場合は、手術を検討します。

薬物療法を継続しても、痛みが続く場合には神経ブロックを適宜行います。 コルセット着用による装具療法、牽引療法、電気療法、温熱療法、光線療法、水治療法などの物理療法も適宜組み合わせて、症状の軽減を図ります。
痛みがおさまってきたら、筋力低下を防ぐために、腹筋、背筋の強化、ストレッチなどの運動療法を開始します。 保存療法を行っても効果がみられない場合は、手術を検討することもあります。

4.経過観察を行います

【~1年】

症状が軽くなり、動きに支障がなくなったら、日常生活に戻ります。 初診から半年ほどあとにMRIなどの画像検査を行って、患部の状態を確認する ことがあります。椎間板が飛び出した状態が解消されていなくても、症状がなくなれば治療を終えます。